三菱商事(証券コード:8058)の配当は、2016年3月期の16.7円から2026年3月期の110円へ、 10年で6.6倍になりました(2024年1月の株式分割を調整した金額)。
一方で、2026年8月5日時点の配当利回りは2.69%。当ブログの目安である3.5%を下回っています。 「商社株が話題だけど、利回り2%台なら高配当株じゃないのでは?」——この迷いに答えるのが今回の記事です。
先に結論を書きます。三菱商事は「今の利回りが高い株」ではなく「配当が育つ株」です。 そして、2016年3月期には減配しています。増配一本槍の銘柄ではありません。 その減配の年まで含めて、IRBANKのデータで正直に分析します。
基本情報
現在の株価・配当情報
100株買うには約46万4,100円が必要です。年間の配当金は税引前で1万2,500円、 NISA口座以外なら約20.315%が引かれて手取りは約9,960円になります。
スクリーニング指標
数値はIRBANK(2026年8月5日時点/2026年3月期確定値)ベースの参考値です。
| 指標 | 三菱商事の数値 | 目安・コメント |
|---|---|---|
| 配当利回り (株価に対する配当金の割合) |
2.69%(2027/3期予想) | 目安3.5%以上 ⚠️ 株価上昇で低下中 |
| 自己資本比率 (総資産に占める自己資本の割合) |
41.09% | 40%以上 ✅ 商社としては高水準 |
| PER (株価収益率・割安度の目安) |
15.45倍(予想) | 15倍以下 ⚠️ わずかに上回る |
| PBR (株価純資産倍率) |
1.76倍(実績) | 1.5倍以下 ⚠️ 割安ではない |
| 配当性向 (利益のうち配当に回す割合) |
52.2%(2026/3期) | 20〜60% ✅ ただし4年で倍増 |
| ROE (自己資本利益率・経営効率) |
11.42%(予想) | 8%以上 ✅ |
| 連続増配年数 | 2017/3期〜2026/3期の10期連続 | 増配継続中 ✅ 直前の2016/3期は減配 |
| 時価総額 (会社全体の値段) |
約17兆2,205億円 | 500億円以上 ✅ 超大型株 |
⚠️マークが3つ付きました。今の株価は「安いから買う」という水準ではありません。 PBR1.76倍は、会社の解散価値の1.76倍の値段が付いているという意味です。 2016年3月期のPBRは0.6倍前後でした。市場の商社株への評価が、この10年で大きく変わっています。
11期分のグラフ
過去11期の配当金推移(減配した年も載せます)
金額は2024年1月1日の「1株→3株」分割を調整した後の値です。 カッコ内は当時、実際に発表された金額です。
| 年度 | 1株あたり年間配当金 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2016/3期 | 16.7円(50円) | 減配 |
| 2017/3期 | 26.7円(80円) | 増配 +10.0円 |
| 2018/3期 | 36.7円(110円) | 増配 +10.0円 |
| 2019/3期 | 41.7円(125円) | 増配 +5.0円 |
| 2020/3期 | 44.0円(132円) | 増配 +2.3円 |
| 2021/3期 | 44.7円(134円) | 増配 +0.7円 |
| 2022/3期 | 50.0円(150円) | 増配 +5.3円 |
| 2023/3期 | 60.0円(180円) | 増配 +10.0円 |
| 2024/3期 | 70.0円 | 増配 +10.0円 |
| 2025/3期 | 100.0円 | 増配 +30.0円 |
| 2026/3期 | 110.0円 | 増配 +10.0円 |
| 2027/3期(予想) | 125.0円 | 増配 +15.0円 |
累進配当とは何か(三菱商事の株主還元方針)
三菱商事は中期経営戦略で累進配当を掲げています。 累進配当とは「減配せず、配当を維持または増配する」という方針です。
意味があるのは、業績が悪い年です。方針のない会社は利益が半減すれば配当も半減させます。 累進配当を掲げる会社は、その年も配当を据え置くか増やします。 2021/3期の三菱商事がまさにそれで、純利益が前期比で約7割減っても増配しました。
財務の安定性(純利益と配当性向)
商社の利益は年ごとの振れが大きいため、単年ではなく流れで見ます。
| 年度 | 純利益(親会社帰属) | 配当性向 | 1株配当(調整後) |
|---|---|---|---|
| 2016/3期 | ▲1,494億円 | — | 16.7円 |
| 2020/3期 | 5,354億円 | 37.9% | 44.0円 |
| 2021/3期 | 1,726億円 | 114.7% | 44.7円 |
| 2022/3期 | 9,375億円 | 23.6% | 50.0円 |
| 2023/3期 | 1兆1,807億円 | 22.2% | 60.0円 |
| 2024/3期 | 9,640億円 | 30.4% | 70.0円 |
| 2025/3期 | 9,507億円 | 42.2% | 100.0円 |
| 2026/3期 | 8,005億円 | 52.2% | 110.0円 |
| 2027/3期(予想) | 1兆1,000億円 | 約43%(試算) | 125.0円 |
配当性向が上がり続けている点は見ておいてください。 2023/3期の22.2%から2026/3期の52.2%へ、3年で30ポイント上昇しています。 利益が減っても配当を増やしてきた結果です。利益に対する配当の余裕は、確実に薄くなっています。
2021/3期の配当性向114.7%は、その年の利益を上回る配当を出したという意味です。 単年なら過去の蓄えで払えますが、これが続く会社は「タコ配」になります。 三菱商事は翌期に純利益9,375億円へ回復し、性向は23.6%に戻りました。
2027/3期は純利益1兆1,000億円(前期比37.4%増)の会社予想です。 カナダのLNG事業の本格稼働と銅など資源価格の上昇が理由とされています。 この予想どおりなら配当性向は約43%まで下がり、増配の余力も戻ります。
直近の決算:2027/3期 第1四半期(2026年8月3日発表)
4〜6月期の純利益は2,985億円(前年同期比47.0%増)、収益は5兆1,810億円(同22.8%増)でした。 数字だけ見れば好調です。
ただし通期計画1兆1,000億円に対する進捗率は27.1%で、 過去5年平均の32.2%を下回っています。上期の実績が出る11月の中間決算まで、 通期予想の達成度は判断を保留するのが妥当です。
🐨 コアラ先生のひとこと
この銘柄に注目した理由:
「利回りだけで高配当株を選ぶと何を見落とすか」を説明するのに、これ以上の教材がないからです。
2016年3月期に三菱商事を買った人の取得単価は、分割調整後で約636円。
その人が今受け取る配当は1株125円の予想です。
取得価格に対する利回りは19%を超えます。
買った瞬間の利回りは2.62%でした。配当が育つとはこういうことです。
初心者へのアドバイス:
とはいえ、これは「今から買えば同じことが起きる」という話ではありません。
当時の三菱商事はPBR0.6倍・最終赤字・減配直後という、誰も買いたがらない状態でした。
今はPBR1.76倍で、市場の期待が株価に十分に織り込まれています。
買うなら一度に全額入れず、資源価格が崩れて株価が下がった局面で買い増す前提で、
最初の1回は打診の100株にとどめる。この銘柄の値動きの幅を考えると、その入り方が合っています。
注意点:
リスクは3つあります。1つ目は資源価格。LNG・銅・鉄鉱石が下がれば利益は一気に縮み、
2016年3月期のような赤字と減配が再び起こり得ます。
2つ目は配当性向の上昇。52.2%まで来ており、利益が伸びなければ増配は止まります。
3つ目は分散の落とし穴です。三菱商事・三井物産・伊藤忠を並べて買っても、
資源価格が下がれば全部同時に下がります。
商社株はポートフォリオの中で1業種として数えてください。
よくある質問
あります。2016年3月期に1株70円から50円へ減配しました。資源価格の急落でLNG・鉄鉱石などに減損を計上し、最終赤字1,494億円となった年です。前期の70円には記念配当が含まれていたため、実質の減配幅はこれより小さくなります。2017年3月期以降は減配していません。
しません、とは言えません。累進配当は会社が掲げる方針であり、法的な義務ではないためです。経営環境が変われば方針は見直せます。実績として2021年3月期に純利益が約7割減っても増配した点は評価できますが、方針は約束ではないと理解してください。
当ブログの目安3.5%は下回っています。三菱商事は「今の利回りが高い株」ではなく「配当が育つ株」に分類してください。分割調整後で2016年3月期16.7円だった配当は、2026年3月期に110円になりました。
買えます。成長投資枠の対象です。100株で約46万4,100円なので、年間240万円の成長投資枠に収まります。NISA口座なら配当金の約20.315%の税金がかからず、年1万2,500円の配当をそのまま受け取れます。ただし受取方法を「株式数比例配分方式」にしていないと非課税になりません。
配当金・業績データ(出典:IRBANK)
配当金:https://irbank.net/E02529/dividend
財務データ:https://irbank.net/E02529/pl
トップページ:https://irbank.net/8058
株価データ
現在株価4,641円は2026年8月5日時点のIRBANK掲載値です。
グラフ内の年末株価は「配当金 ÷ 配当利回り」から逆算した概算値です。
Yahoo!ファイナンス:https://finance.yahoo.co.jp/quote/8058.T
配当利回りの計算方法
年間配当金 ÷ 現在株価 × 100 = 配当利回り(%)
株式分割の調整
2024年1月1日に1株→3株の分割が行われました。2023年3月期以前の配当金は、
発表額を3で割って現在の株数に揃えています(例:2016年3月期50円 ÷ 3 = 16.7円)。
会社発表の一次情報
公式IR:https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/
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【免責事項】本記事は情報提供のみを目的としており、特定の銘柄・金融商品への投資を推奨するものではありません。 掲載データは2026年3月期(2026/3期)確定値をベースにしています(出典:IRBANK)。 株価は2026年8月5日時点です。株価・配当金・各種指標は常に変動します。投資にはリスクが伴います。 投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。 当ブログは投資助言業者ではありません。
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